『モモ』ミヒャエル・エンデ作、大島かおり訳、岩波少年文庫版

 この本は、町外れの円形劇場にある日住みだした「モモ」という女の子が、時間泥棒に盗まれた時間を人々に返していくお話です。

 恋人やお母さんや鳥との時間を奪われた床屋のフージーさん、人形ビビガールによって友だちとの遊びの時間が奪われていく子どもたち、モモのためと言われて時間を奪われる掃除夫ペッポじいさんと観光ガイドのジジ、そして時間を奪っていく全身灰色で灰色の葉巻を吸っている灰色人間たちの恐ろしさ。モモを助けてくれる時間の管理者であるマイスター・ホラとカメのカシオペイアと時間の国の美しさ・・・原作が書かれたのは今から50年程前ですが、時間に追われながら”自分らしい生き方”ができなくなっている現代人のことを書いているようです。
 さて、私がこの本に出会ったのは、小学校の図書室でした。オレンジ色の大きな本で表紙に書かれた細かな時計のイラストが、不思議な世界に誘っているようでワクワクしながら読んだのを今でも覚えています。その後なぜかこの作品には関わりがあり、福祉業界では有名な女優の宮城まり子さんがモモ役だったラジオドラマを偶然つけたラジオで聞き、宮城さんの独特のしゃべり口調と、ところどころ入る不思議な曲調の挿入歌が頭に残っていました。そんな時に私が所属する劇団で上演することになり、タイミング良く全ての曲を手がけることができ、座付き作曲家として、さらには出演者不足だったため、なぜか私までも声がかかり、時間の管理者であるマイスター・ホラ役で初めての舞台に立つことができました。
 数年前、劇団で再上演することになり、一部の曲を編曲し直し、本番は劇場で観客として観ましたが、「モモ」の台詞一つひとつに感動し、考えさせられました。最近朗読音声版を購入したのですが、ぜひ忙しい今だからこそ活字で読んで頂きたい本です。

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